ニセコで自家製天然酵母を使って焼いている「F・A・N」のパンは、都会のパン屋さんと比べると「元気」というか、たくましい感じがする。
2年前に鎌倉からニセコに移住した宮本美穂さん。パンとの出会いは8年前。当時勤めていた会社の上司との関係で人間不信になり、引きこもっていた時、DJ仲間が「パンを焼くのは楽しいよ」と伝えてくれた。早速試してみると、酵母と粉と水が発酵してパンになる、その不思議さにすっかりはまった。しかしイーストのパンは味に納得がいかずに難しいと聞いていた天然酵母のパンに挑戦してみたらあっさりと上手く焼けてしまった。そしてその次に焼いたパンを友人のお母さんが気に入り、周りに伝えてくれて「生業」となるなど、独学のままにトントン拍子にパン屋へと導かれてしまった。美穂さんにとってパン屋は天職だったのかもしれない。
もともとは偶然の産物でできたというパンは発祥の地・エジプトでは「いのち」という意味、と美穂さん。
瓶の中の酵母は発酵を繰り返す生き物だし、大気中に住む目には見えない菌たちがパンの発酵には欠かせない。そんな「いのち」としてのパンを扱うことを大切にしたいとの想いを込め、素材も羊蹄山の湧き水を自ら汲みに行き、出来る限り地元で取れた新鮮な低農薬、無農薬のハーブや野菜、北海道産の小麦を使う。アレルギーなどで身体と心に食べ物が与える影響を身をもって体験したから、砂糖や卵・乳製品は使わない。
ニセコに移り住んでからは、100%手を使ってこね、その時の自分の精神状態もパンに影響するからと、自身でできるペース以上の注文を受けない。
将来は、パンを焼くだけでなく、パンにまつわる写真や詩で飾った絵本を作ったり、子供達にパンづくりを通じて「いのち」について感じてもらえるようなワークショップも開きたいと夢を語る。
キッチンの窓からはすぐ目の前にじゃがいも畑が広がり、ピンクに染まった夕日が美しかった。そんな風景を見ながら焼かれたパンたちは幸せだなと思った。 -米倉-
(2004年発行 SouthSide通信 より)
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お祝いパンは見てるだけでしあわせに
なってくるから不思議
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だんな様の朝ご飯ももちろんラマシパン
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かわいいハート模様のパン
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アイヌ模様のパン
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